オルガネラ相互作用の解析

 オルガネラは独自の機能を発揮しながら、他のオルガネラと協調して細胞内の様々な機能を支えています。例えば、発芽時の脂肪代謝におけるショ糖合成は、オイルボディーペルオキシソームーミトコンドリア、緑葉における光呼吸 (図3) は、葉緑体ーペルオキシソームーミトコンドリアといったオルガネラ間の協調的な機能に支えられています。この時、オルガネラ同士が接着をすることが明らかとなってきました (図12)。

緑葉における葉緑体、ペルオキシソーム、ミトコンドリアの相互作用

 緑葉における葉緑体、ペルオキシソーム、ミトコンドリア間の相互作用は、光合成を阻害すると起こらなくなることから、光合成に依存するものと考えられています。また、奈良先端科学技術大学院大学の細川陽一郎博士との共同研究から、葉緑体とペルオキシソームの相互作用の力を測定することに成功しました (プレスリリース参照)。現在は、この緑葉におけるオルガネラ相互作用の分子機構の解明を行っています。

図12. 緑葉における葉緑体、ペルオキシソーム、ミトコンドリアの相互作用の様子

光条件下では、葉緑体 (微分干渉像)、ペルオキシソーム (赤)、ミトコンドリア (緑) が積極的に相互作用する (矢頭)。この時、ペルオキシソームは形態が長くなり、葉緑体に寄り添うため、接着の面積が大きくなる。暗所下ではペルオキシソームは球状となって、接着は起こらなくなる。

発芽時におけるオイルボディとペルオキシソームの相互作用

 シロイヌナズナやカボチャのような植物は、脂肪を蓄積します (脂肪性種子植物と呼ばれます)。この蓄積した脂肪は、種子が発芽する時に分解されてショ糖となり、幼植物体が光合成能を獲得するまでの生長のエネルギーとして利用されます。脂肪はオイルボディというオルガネラにトリアシルグリセロールとして蓄積し、オイルボディ膜に存在するリパーゼによって脂肪酸が 切り出されて、ペルオキシソームに輸送されます。この時、オイルボディとペルオキシソームが相互作用することがわかってきました (図13)。この相互作用はショ糖によって制御されていること、ペルオキシソームに存在する PED3 というタンパク質が関与していることがわかってきました (Cui et al. (2016) J. Biol. Chem.)

図13. 発芽子葉におけるオイルボディとペルオキシソームの相互作用

シロイヌナズナの種子をショ糖を含まない培地で発芽させて、2日後に電子顕微鏡観察を行った。オイルボディ (*) とペルオキシソーム (P) が接着しているのがわかる。ショ糖を含む培地で同様の実験を行うと、接着の効率が低下する。

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